Semiconductor Cleaning 101
半導体プロセスの洗浄技術ノート
洗浄プロセスは半導体の製造フローの中で何回となく繰り返される。やってることは要するに「基板表面をきれいにする」なんだけど、汚染の種類が多岐にわたるから、それぞれに対応した薬液と手順を選ばないといけない。
しかも前後の工程で基板の状態が全然違う。シリコンむき出しの表面と、 やAlが載った表面では洗浄方法が異なる。間違えると必要な構造まで壊す。洗浄は地味だけど、歩留まりに直撃する超重要工程。
教授がお前の手には想像の何万倍もの雑菌がついているといつも言っていた。よく考えればそうだ。だから僕はキレイじゃなくても良い工学が好きだ。(例えばソフトウェアとか?)
汚染の種類
VLSI製造における汚染は大きく分けてイオン性と非イオン性がある。
イオン性汚染はNa、Li、K みたいなアルカリ金属イオンが代表格。人体からの転移、メッキ液、薬液、部材、原料から来る。こいつらが厄介なのは、基板の表面や内部にイオンの形で存在して電界をかけるから、MOS型デバイスの電気的特性をめちゃくちゃにすること。実際、Naのアルカリ金属汚染がMOSデバイスの製品化を遅らせた歴史がある。
非イオン性汚染は有機物(ワックス、オイル、樹脂)と無機物(金属類、酸化物)に分かれる。製造工程上ではホトレジスト片の付着が一番よくある有機物汚染。無機物はFe、Ni、Crみたいな重金属からAu、Pt、Ag、Cuみたいな貴金属まで幅広い。
デバイスに何が起きるか
ここが大事なところ。汚染の種類ごとに壊れ方が違う。
金属汚染が一番インパクトがデカい。重金属(Fe、Ni、Cr)はゲート酸化膜の経時絶縁破壊耐圧(TDDB)を劣化させて、pn接合リークを発生させて、キャリアのライフタイムを下げる。アルカリ金属はSi- 界面を不安定化させて、(しきい値電圧)がシフトする。Cu、Auなんかはライフタイム低下が顕著。
酸化膜残り・自然酸化膜はコンタクト抵抗を増大させる。ひどいとオープン不良。コンタクトホールの底に薄い酸化膜が残ってるだけでアウト。
ポリマー(ドライエッチング残渣)はAl配線のコロージョンを起こしてオープン/ショートの原因になる。ドライエッチング後にポリマー除去をサボると、後で泣くことになる。
パーティクル(粒子状汚染)は有機・無機を問わず歩留まり低下の直接原因。デザインルール(最小加工線幅)の1/10サイズのパーティクルで問題になるレベル。
プラズマダメージは見えない汚染。誘起結晶欠陥で のリークやpn接合リークが起きる。チャージアップは絶縁破壊、耐圧低下。プラズマ関与のプロセスで生じるから、除去には実際に表面を削らないといけないことも多い。
洗浄工程はいつやるか
答えは「ほぼ全工程の前後」。具体的には、
- 初期洗浄 — シリコン基板の表と裏。まっさらな状態にする
- 酸化前処理 — 自然酸化膜を除去して、ゲート酸化やLOCOS工程に備える
- CVD前処理 — ポリシリコンと の共存表面、Alと の共存表面など。成膜前の清浄度が膜質に直結する
- スパッタ前処理 — SiとAlと が混在する表面の清浄化
- ドライエッチング/アッシング後処理 — 副生成物、ポリマー残渣、ダメージ層の除去。ここをサボると配線が腐る
- CMP後処理 — 研磨剤(スラリー)と研磨片の除去。Cu CMPだとCu粒子汚染も問題になる
- メッキ後処理 — デバイスウェハの表面と裏面。Cu粒子のエッジへの回り込みにも注意
前後の工程内容、基板の状態によって薬液の種類も組成も変わる。一律の洗浄レシピなんてものはない。
in-situ clean
CVDやスパッタなどの装置では"in-situ clean"という工程がある。装置内で次のウェハが来るまでにガスで洗ってしまう。装置一体型の洗浄。酸化のファーネスに酸化前洗浄室が組み込まれるケースもあって、こういう装置的インテグレーションは今後も進みそう。
せっかくウェハを徹底的に洗浄しても、搬送する容器が汚染してたら意味がない。キャリアにはホトレジスト片やシリコン片、シリカ片が残留してウェハに転移する可能性がある。洗浄は単にウェハだけの話じゃなくて、容器類、ハンドリングツール、反応管、サセプタ、電極まで含めた全体の話。