半導体の基本的性質
半導体の特徴は3つある。
まず抵抗率が導体と絶縁体の中間にある物質で、値としては 10−5 〜 105 [Ω⋅m] の範囲。次に、抵抗率が外部擾乱(熱、光、不純物)に著しく敏感であること。そして、添加する不純物の種類によって電流に寄与する電荷の正負が異なること。この3つ目の性質がp型/n型の区別を生む。
シリコン(Si)の結晶構造はダイヤモンド構造で、単位格子に含まれる原子数は8個。FCC格子2つを体対角線方向に1/4だけずらして重ねた構造になっている。
Si真性半導体にP(リン)やAs(ヒ素)を添加すると電子密度が増加する。これらは5族元素で、Siの4本の共有結合に対して余った1個の電子がドナーとして伝導帯に供給される。
電子配置
Siの電子配置は 1s22s22p63s23p2、Geの電子配置は 1s22s22p63s23p63d104s24p2。Si、Geともに価電子数は4。最外殻の s2p2 が共有結合に参加する。
エネルギー帯構造
半導体のエネルギー帯構造において、価電子が存在する領域を価電子帯(valence band)、自由電子が存在する領域を伝導帯(conduction band)という。電子の占有確率が50%となるエネルギー準位をフェルミ準位(Fermi level)という。
エネルギーギャップ Eg が小さくなるとキャリア密度は増加する。バンドギャップが狭いほど価電子帯の電子が熱励起で伝導帯に上がりやすくなるから。
フェルミエネルギー EF が低くなると正孔密度は増加する。EF が価電子帯に近づくことで、価電子帯上端付近の空き状態(正孔)が増えるため。
電気伝導
半導体における電気伝導には3種類ある。ドリフト電流(電界による駆動)、拡散電流(濃度勾配による駆動)、再結合電流(電子と正孔の再結合に伴う電流)。半導体の移動度 μ が大きくなると抵抗率 ρ は低下する。ρ=1/(nqμ) の関係から明らか。
ホール効果
ホール効果は、半導体に電流を流して垂直に磁界を加えたとき、この両方に垂直な方向に電圧が現れる現象。キャリア密度と移動度の測定に用いられる。また、ホール係数 RH の正負により材料の伝導型(p型かn型か)の判別も可能。
移動度の温度依存性
n型半導体の電子移動度は温度によって振る舞いが変わる。低温領域ではイオン化不純物散乱が支配的で、温度が上がると散乱断面積が減って移動度が増加する(μ∝T3/2)。高温領域では格子振動散乱(フォノン散乱)が支配的になって、温度上昇とともに移動度が減少する(μ∝T−3/2)。
n型半導体の不純物密度を大きくした場合、低温領域で電子移動度は低下する。不純物イオンが増えるから散乱が強くなる。
pn接合
pn接合の界面に生じるキャリアが存在しない領域を空乏層(depletion layer)という。この領域には空間電荷により電界ができる。電界の向きはn型領域からp型領域。この電界により電子はn型領域に、正孔はp型領域に向かって動かされる。つまり内部電界はキャリアの拡散を妨げる方向に働く。
バイアスの効果
順方向電圧を印加した場合、空乏層は狭くなり、電位障壁は低くなる。キャリアが接合を越えやすくなって電流が流れる。
逆方向電圧を印加した場合、空乏層は広くなり、電位障壁は高くなる。キャリアの移動が阻止されて、微小な逆方向飽和電流しか流れない。
電流-電圧特性
順方向の電流密度は順方向電圧に対して指数関数的に増大する。電流が急激に立ち上がる電圧を立ち上がり電圧といい、Siの場合は0.6〜0.7 V、Geの場合は0.3 V。逆方向の電流密度はほぼ一定で、この値を逆方向飽和電流密度 J0 という。
ダイオードの電流-電圧特性は理想ダイオード方程式で記述される。
J=J0[exp(kTqV)−1]
降伏現象
pn接合ダイオードに大きな逆方向電圧を加えると、あるところで急激に大きな電流が流れ始める。これがダイオードの降伏(breakdown)現象。メカニズムとしてはアバランシェ降伏(高電界でキャリアが衝突電離を起こす)とツェナー降伏(強電界でバンド間トンネリングが起きる)の2種類がある。
この現象を利用した素子が定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)で、基準電圧を発生させる用途に使われる。
光と半導体
価電子帯に存在する電子に束縛を振り切るエネルギーを持つ光(hν≥Eg)を半導体に照射すると、電子正孔対(electron-hole pair)が発生する。
pn接合ダイオードに光信号が入射されたとき、空乏層内で発生した電子正孔対は内部電界により電子がn型領域に、正孔がp型領域に移動し、バイアスを加えない場合でも光電流が流れる。光電流は入射される光信号の強度に応じて増加する。光電流をパラメータとして光検出に用いるダイオードをフォトダイオードという。
計算問題
以下の物理定数を使う。
- 電子の電荷 q=1.60×10−19 [C]
- ボルツマン定数 k=1.38×10−23 [J/K] =8.62×10−5 [eV/K]
- プランク定数 h=6.63×10−34 [J⋅s]
- 光速 c=3.00×108 [m/s]
- 1 [eV] =1.60×10−19 [J]
フェルミ・ディラック分布
フェルミ準位から 5.20×10−2 eV上の準位が電子により占有される確率を求める。温度は27°C(T=300 K)、exp(1)=2.72 とする。
フェルミ・ディラック分布関数は、
f(E)=1+exp(kTE−EF)1
E−EF=5.20×10−2 eV、kT=8.62×10−5×300=2.586×10−2 eV を代入すると、
kTE−EF=2.586×10−25.20×10−2≈2.01
f(E)=1+exp(2.01)1=1+(2.72)2.011≈1+7.471=8.471≈0.118
占有確率は約11.8%。フェルミ準位より 2kT 上なので、ボルツマン近似(f≈e−2≈0.135)とも概ね整合する。
熱エネルギーとバンドギャップ
Si結晶に727°C(T=1000 K)の熱を加えた場合の熱エネルギーを求める。
Ethermal=kT=8.62×10−5×1000=8.62×10−2 eV
Siのバンドギャップは Eg=1.1 eV。kT=0.0862 eV ≪Eg=1.1 eV なので、単一電子の熱エネルギーだけでは伝導帯に達することはできない。ただし実際にはボルツマン分布のテール部分で Eg を超えるエネルギーを持つ電子が存在するから、1000 Kでは相当数の電子が熱励起される。
n型Siのキャリア密度
ドナー密度 ND=5.0×1022 [m−3]、真性キャリア密度 ni=1.5×1016 [m−3] のn型Si。
ND≫ni なので電子密度は n0≈ND=5.0×1022 [m−3]。質量作用の法則 n0p0=ni2 から正孔密度を求めると、
p0=n0ni2=5.0×1022(1.5×1016)2=5.0×10222.25×1032=4.5×109 [m−3]
少数キャリア(正孔)密度は多数キャリア(電子)密度に対して13桁も小さい。
p型Siの正孔密度
断面積 A=2.0×10−6 [m2]、長さ L=4.0×10−2 [m] のp型Siに10 Vの電圧で0.2 Aの電流が流れた。正孔移動度 μp=400×10−4 [m2/Vs]。
まず抵抗率を求める。R=V/I=10/0.2=50 [Ω] から、
ρ=R⋅LA=50×4.0×10−22.0×10−6=2.5×10−3 [Ω⋅m]
ρ=1/(qμpp) の関係から正孔密度を求めると、
p=qμpρ1=1.60×10−19×400×10−4×2.5×10−31
=1.60×10−231=6.25×1022 [m−3]